オープンフォーラム

2018年12月27日

第3回WEATHER-Eyeオープンフォーラムが2018年12月11日に開催されました。

第3回WEATHER-Eyeオープンフォーラムが2018年12月11日に開催されました。

 
WEATHER-Eyeコンソーシアムが主催する、第3回WEATHER-Eyeオープンフォーラムが2018年12月11日、産官学から208名の参加者を迎えて、東京大学武田ホール(東京・文京区)で開催されました。一昨年の初回以降、毎年開催されて3回目となる今回は「革新技術が、明日の翼に自由を」がテーマ。オープンフォーラムの方向性を決めるステアリング会議の議長を務める、渡辺重哉氏(JAXA航空技術部門)の開会挨拶に続き、第一部「基調講演」では木村茂雄氏(神奈川工科大学工学部)の司会で進められ、3件の講演が行われました。

<第一部 基調講演>
国土交通省航空局交通管制部の伊藤希望氏は「CARATS(将来の航空交通システムに関する長期ビジョン)における航空気象情報の高度化への取り組み」と題して、長期ビジョン策定の背景や推進体制などを紹介しました。

気象庁予報部予報課航空予報室の宮腰紀之氏は「気象庁における航空交通管理への対応」と題した中で、航空機の運航に大きな影響を及ぼす雷・大雪・ウインドシアーなどの観測業務や、運航用飛行場予報などに触れた上で、国土交通省航空局の航空交通管理(ATM)に対する高精度の予測情報提供について紹介しました。

防災科学技術研究所気象災害軽減イノベーションセンターの中村一樹氏は「気象と防災 ― 気象災害軽減イノベーションセンターの取り組み ―」と題して、2016年4月に開設された同センターの概要を説明し、防災ニーズの把握から社会実装に至る研究サイクルや、豪雨や雪氷災害に対応したユニークな研究施設などを紹介しました。

<第二部 一般講演>
この後、休憩とパネル展示観覧を挟んで、第二部「一般講演」では中西義孝氏(熊本大学先端科学研究部)の司会で5件の講演が行われ、WEATRHR-Eyeコンソーシアムでの最新の活動状況が紹介されました

日本ペイント・サーフケミカルズ株式会社(開発部)の守田克彰氏は「機体への着氷を防ぐための技術 ― 雪氷防止技術の今後 ―」と題して、日欧共同の研究プロジェクト「JEDI-ACE」や、その成果を受け、着雪現象の理解をさらに深めた日本の研究プロジェクト「ICE-WIPS」について紹介。ここで開発された撥水性の防除氷コーティングを使えば、飛行中に雪氷や過冷却水にさらされる主翼の着氷雪防止ヒーターの電力を、最大で70%削減できるのと同等の防除氷効果が得られたと紹介しました。

北見工業大学工学部の舘山一孝氏は「積雪によるオーバラン事故を防ぐための技術」との題で講演しました。世界トップクラスの豪雪地域に利用旅客数の多い空港を抱える日本では、欠航やダイバート(目的地変更)で生ずる不利益回避のため、滑走路の積雪状況をより詳細かつリアルタイムに把握するシステムが必要だとして、滑走路の地下に埋め込み、下方から照射した光の散乱光をカメラで捉え解析することで、氷雪の種類や量を把握する、埋設型積雪センサ「GLASS」について紹介しました。
講演を受け会場からはエアラインのパイロットが質問に立ち、「新千歳空港は世界一条件の厳しい空港という印象がある。研究の進展に期待を持って見守りたい」とのコメントがありました。

株式会社SUBARU航空宇宙カンパニーの河野充氏は「被雷事故を防ぐための技術」と題した講演の中で、航空機自身がきっかけとなる航空機発雷は、特に離着陸時に回避がきわめて困難な現象であり、それにより機体の複合材修理などの被害が生じている現状を説明。同社とJAXA及び首都大学東京で取り組む、NEDO委託事業「IoTを活用した新産業モデル創出基盤整備事業/次世代航空機運航支援システム開発」の中で、レーダーによる検知が難しい日本海側の冬の雷を対象に、複数箇所で得られた地上電界の観測値と、実際の雷の発生の記録をAI分析することで、高精度な被雷リスク予測につながる研究開発事業について紹介しました。

JAXA(航空技術部門)の水野拓也氏は「微粒子吸込みによるエンジン事故を防ぐための技術」をテーマに講演しました。火山灰、過冷却の水滴、氷の粒などによるエロージョン(侵食摩耗)やデポジション(堆積)によるトラブルの実例などを紹介。水野氏はこの技術を「耐特殊気象エンジン技術」と位置づけ、それらを抑制するための手法を紹介しました。

同じくJAXA(航空技術部門)の井之口浜木氏は「航空機事故を防ぐための搭載型ライダー技術 ― レーダーでは見つけられない乱気流、火山灰、氷晶の遠隔検知を目指して ―」と題して、赤外レーザーを発する小型で高出力のドップラーライダーを使って、航空機の前方のエアロゾル粒子の散乱光を受信・解析し、遠方の乱気流を検知するシステムを紹介。さらに、低頻度ながら大事故につながりかねない火山灰や氷晶などの検知に向けた機能向上の取り組みなどを紹介しました。

以上、3件の基調講演(第一部)と5件の一般講演(第二部)を終え、ステアリング会議 副議長の荻巣敏充氏(株式会社SUBARU 航空宇宙カンパニー)の閉会挨拶で、オープンフォーラムは終了しました。その後には懇親会も行われ、こちらにも多数の方のご参加をいただきました。

今回は、WEATHER-Eyeコンソーシアムと他の研究プロジェクトとの連携に触れる講演や、航空産業の現場からの声など、幅広い分野の参加者による交流がさらに広がりました。こうした参加者間の活発な意見交換をベースとし、次回も、研究開発を加速させ、コンソーシアムをさらに発展させるよう進めてまいります。